不審なオプション取引

倒産は有りえない、と噂を否定していたが、けっきょく何のことはない。噂は事実に近かったのだ。AP通信によると、ニューヨーク連邦準備銀行とJPモルガン・チェースが共同で、不動産ローン債権担保証券で膨大な損を出しているベアスターンズ(投資銀行)の救済に乗り出すことになった。

(ベアスターンズは五大投資銀行の一つ。他4社は、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、メリル・リンチ、そしてモルガン・スタンレー。)先ず、ベアスターンズの取引開始直後の動きを見てみよう。

(5分足)

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1、木曜の大引け: 57ドル3セント

2、金曜の取引開始30分後、26ドル85セントの安値を記録した。

火曜、連銀の資金供給ニュースで、マーケットは強力なラリーを展開していたが、この日、ベアスターンズは5年ぶりの安値に転落した。スティーブン・スミス氏(ストリート・ドット・コム)は、こんなことを指摘している。

11日の火曜日、ベアスターンズが65ドルあたりで売買されている時、3月限30ドルのプットオプションに、5万5000枚という大きな取引があった。(注:株が上がると思うならコールオプションを買い、逆に、下がると思う時はプットオプションを買う。ようするに、30ドルのプットを買った人たちは、ベアスターンズが30ドルまで下げることを予想していた。)

このプットオプション買いには、少なくとも、二つの不審な点がある。

1、なぜわざわざ、30ドルなどという、遠く離れたプットオプションを買ったのだろうか?

下げ方向を予想するのは構わない。しかし、65ドルで取引されている株が30ドルまで下げるには、半分以上の価値を失う必要がある。普通なら、その時点における株価に近いオプションを選ぶから、3月限60ドルのプットオプションを買うことになる。

2、なぜ3月限を選んだのだろうか?

個別株オプションは、毎月第3週目の金曜日に時間切れになる。(21日の金曜は祭日なので、今月は20日の木曜が取引最終日になる。)11日にプットオプションを買っているわけだから、9日間以内に、株価が半分以下になることを予想していたわけだ。一般的には、3カ月以上の時間が残っているオプションを買う。

スミス氏によると、11日に買われた5万5000枚のプットオプションの平均価格は、一枚あたり15セントだったと言う。現在、このオプションは4ドル75セントだから、ほぼ30倍だ。

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(参考にしたサイト:http://biz.yahoo.com/rb/080314/bearstearns.html?.v=11

http://biz.yahoo.com/ap/080314/bear_stearns.html

http://www.thestreet.com/story/10407812/1/who-traded-55000-bear-stearns-30-puts-tuesday.html

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