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あてにならないGDP

米国経済は、既に思っている以上に悪い、という声が聞こえるようになった。先週金曜に発表された第3四半期GDP(国内総生産)は、予想された+2.1%を下回る+1.6%、という結果だった。これだけでも冷えこみを見ることができるが、実際の数値は、+1.0%に満たないという。

アライアンス・バーンスタイン社のエコノミスト、ジョー・カーソン氏はこう語っている。「今回の報告で際立って目立つのは、26%増の自動車生産量です。この数字を除くと、GDPは発表された+1.6%ではなく、+0.9%になります。

既に、ゼネラルモーターズ(GM)とフォードモーター(F)は減産が実施されていますが、それにもかかわらず、なぜ生産量が増えたのでしょうか?答えは、スポーツ用多目的車(SUV)や小型トラックの卸売り価格が下がり、各自動車メーカーは売れ残った2006年型モデルを、いっせいに処分しようとしたためです。自動車業界の低迷が、具体的な数字としてGDPに現れるのは、次の発表になると思います。」

少し説明すると、米国商務省が車の生産量を割り出すために使っているのは、自動車卸売り業者からの数字だ。第3四半期、スポーツ用多目的車(SUV)の卸売り価格は5.5%ほど下がり、一時的に販売数が上がった。しかし、格安価格での売上だから、単にSUVが右から左に動いたたけだ。

カーソン氏は、自動車メーカーの低迷は次のGDP発表で顕著になる、と言っているが、それを裏付けする報道があった。フロリダに本拠地があるオートネーションは、アメリカで最大の自動車とトラックの卸売り業者だ。その規模は、80のGM販売店、48のフォード販売店、58のクライスラー販売店、そして147のフランチャイズ店にのぼる。

第4四半期、オートネーションはデトロイト自動車メーカーへの注文台数を30%減らす。最高経営責任者、マイク・ジャクソン氏によれば、全米各地での販売数が下落している。今年9月までの状況を見ると、GM車の売上は8.6%減、そしてフォードとクライスラーがそれぞれ7.3%減だ。「このままの状態では、2007年になっても、2006年型の販売が続きそうだ」、とジャクソン氏は述べている。

危険シグナルは、自動車産業だけでなく、他の製造業や小売セクターにも見られる。たとえば、先日発表された小売最大手、ウォルマートの売上は2000年12月以来の低成長だった。製造業者は、予想以上に大きな在庫を抱えているから、第4四半期の生産量は下落することだろう。

マスコミは、住宅市場の冷えこみばかりを報道するが、アメリカの経済の落ち込みは、思っているより広範囲にわたっているようだ。

今週の経済カレンダーは忙しい。注目されるのが、金曜に予定されている10月分の雇用統計だ。非農業部門新規雇用者数は+12万5000、失業率は4.6%、そして平均時給は0.3%増が予想されている。予測されたとおりの結果なら、株式市場は極端な動きをすることはない。しかし、インフレ懸念を再発させるような数値、具体的には失業率が4.5%に下がり、平均時給が0.5%以上の伸びなら、金利引き上げ支持者たちの声が大きくなるだろう。

「2007年度の金利動向ですが、この予測がなかなか難しいのです」、と言うのは経済コラムニストのジム・ジューバック氏だ。「米国経済が、予想以上に悪くなったとしましょう。たとえば、GDP(国内総生産)が1.5%以下の成長率に落ち込み、不況の確率が濃厚になれば、とうぜん連銀は金利引き下げを実施します。現に、国債市場は、このシナリオを織り込んでいます。逆に、アメリカの経済が、予想以上に強い場合はどうでしょうか?GDPが3.5%以上のペースで伸びるようなら、バーナンキ連銀議長は、まちがいなく金利を引き上げることでしょう。」

またインフレの心配をしないといけないのだろうか?インフレ対策の一つとして金投資が選ばれるが、ファンドマネージャー、ジョセフ・ウィックワイヤ氏は、こんな見方をしている。

「金は、長期的ブルマーケットの初期段階です。マクロ経済、地政学的要素、そして需給バランスなどから、金の上昇を予測することができます。米国の膨大な貿易赤字は、ドルを15%から35%ほど下落させる可能性があります。もちろん、そんな事態が起きれば、とうぜん金買いが活発になります。」

直接に金を買わなくても、金鉱銘柄を買うことで、金市場に参加することができる。ウィックワイヤ氏は、実際にどんな金鉱銘柄に投資しているのだろうか?

毎年、約500万オンスほどの金が生産されるが、ウィックワイヤ氏が最も勧めるのは、世界最大の金生産業者、バリック・ゴールド(ABX)だ。特に魅力的なのは、生産コストが低いから収益性に優れている。また、バリック・ゴールドは銅部門もあるから、単なる金専門会社でないことを、氏は付け足している。アナリストの意見を見てみると、4人が強い買い、11人が買い、5人がホールド、そして2人が売り格付けを設定している。アナリストたちの、平均目標株価は42ドルだ。(金曜の引値は29ドル91セント)収益性の良さをウィックワイヤ氏が指摘しているように、ここ12カ月間の伸びは、過去3年間の平均成長率を上回っている。

IQではなくEQを確認しよう

IQは知能指数。それでは、あなたはEQをご存知だろうか?EQ?これもIQのように頭文字を取ったものだが、EはEmotional、そしてQはQuotientだ。直訳すれば、「感情指数」、ということになる。「EQを確かめることで、自分が本当に株や先物のトレードで成功できるかを知ることができます」、とベテラン・トレーダーのジョー・ロス氏は言う。話の一部を紹介しよう。

感情指数は、いくつかの要素で構成されるが、先ず挙げたいのは自己動機付け(セルフ・モチベーション)だ。トレードで成功するには、プラス思考が要求されるから、モチベーションも前向きなものでなくてはいけない。正しく自己動機付けをするには、自分を信じることが大切だ。どんなに必死に動機付けをしても、悲観的思考を捨てることができなければ、トレードで成功することは難しい。

暗い方向ばかりに目が行く人は、トレードで損を出すたびに、自分は才能が無いと思い込み、「敗者」というレッテルを自らに貼ってしまう。前向き思考の人は、たとえトレードに失敗しても、劣等感を与えるような自己批判をしない。ルールどおりにやっても、損を出すことなどトレードの世界では日常茶飯事だ。簡単に、「私はダメな人間だ」、などと軽々しく口にしてはいけない。

あなたは適切に自己認識ができるだろうか?ある銘柄を買う、と決めたとしよう。問題は、それをどう決定したかだ。単なる感情的な買いだろうか?それとも、ルールに基いた買いだろうか?いったい何が、自分の行動を支配しているのかを、冷静な目で見なくてはいけない。

一つ注意しておきたいことがある。感情と直感を混同してはいけない。直感には、思わぬ先見性があるから、何かひらめいた時は、先ず分析してみよう。誤解されやすい表現だが、直感はトレーダーが持つ力強い武器だ。

気分をコントロールすることも大切だ。気分と感情は同じものではないのか、と疑問に思われる方もいることだろう。気分もたしかに感情なのだが、ここで言う気分というのは、トレード以外の事が原因になって起きる感情だ。例を挙げよう。マーケット開始10分前に、あなたは妻と激しい口論をした。その怒りがおさまらぬまま、あなたはコンピュータの前に座る。ムシャクシャした気分だから、とうぜん冷静にチャートを見ることができない。

トレード以外、と記したが、トレードに関することでこんなことも起きる。口座を見ると、昨日処分したはずの株がまだ残っている。さっそく証券会社に電話をするが、担当者の態度があまりにも横柄だ。あなたは気分を害し、頭に血がのぼってくる。とにかく問題は解決したが、害された気分は戻らない。こんな状態でトレードに臨んだら、まずロクな結果にならない。これで、気分をコントロールすることの重要性が、分かっていただけたと思う。

暑くもなく、寒くもない

イギリスの童話、「3匹のクマ」に登場する主人公は、ゴルディロックスという名前の女の子だ。そして現在、アメリカが経験しているのは、ゴルディロックス経済だ、と言うアナリストが多い。これは良い状態なのだろうか、それとも心配した方がいいのだろうか?

話を忘れてしまった人のために、簡単な復習をしよう。森で道に迷った女の子(ゴルディロックス)が、クマの家を見つけた。(単に散歩していただけかもしれない。)中に入ると、テーブルの上には三つのスープがあった。(スープではなく、オートミールという訳もある。原語はporridge)

お父さんクマのスープは熱すぎる。お母さんクマのは冷たすぎる。しかし、子どものクマのスープは丁度よかった。どうだろう?話を思い出されただろうか?ということで、ゴルディロックスちゃんは、子どものクマのスープを飲んだ。

途中を飛ばして結末に進もう。女の子は眠くなったので寝室へ行くと、三つのベッドがあった。お父さんクマのは硬すぎ。お母さんクマのは柔らかすぎ。子どものベッドは丁度よかった。子どものベッドで寝ていると、クマたちが帰ってきた。ビックリした女の子は、飛び起きて逃げさる。ようするに、ゴルディロックス経済というのは、丁度良い状態のことだ。

「快適なベッドで眠るゴルディロックスちゃんは、まるで今日の投資者のようです」、とインベスター・アラートのジョン・ムガリアン氏は言う。連日ダウ指数の高値更新が報道され、投資者たちはベアマーケットのことなど、全く頭に無いことだろう。もし今、クマが現れたら投資者はどんな反応を示すだろうか?氏の話を続けよう。

「昨日の金利据え置き発表は、単なる時間の浪費です。連銀は最初から、金利を引き上げることなど考えていません。中間選挙まで、あと約二週間です。こんな重要な時期に、金利引き上げなどありえません。現に、引き上げを唱えたのは、リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー氏だけです。

ソフトランディングが主流意見ですが、住宅市場を考慮すると、いまだにハードランディングの可能性を、完全に否定することはできません。更に、逆利回り現象や中東問題も心配要素です。

ソフトランディングを提唱する人たちは、最近下がったエネルギー価格を指摘します。たしかにその通りですが、いぜんとして高いレベルであることも事実です。それに、こんなことも言えます。オイルが急騰している時は、中東からのオイルに依存することをやめて、代替エネルギー開発が叫ばれました。しかし、オイルの下落で、そんな声が聞こえなくなり、節エネは死語になったようです。

中間選挙終了後、エネルギー価格の上昇が始まることでしょう。そして株式市場は、8%から10%ほど下げると思います。きっと投資者たちは、森の中へ逃げさることでしょう。」

中間選挙とダウ指数

「風邪をひいてしまったので、おとなしく休むことにしました。ちょうど良い機会だったので、もう一度「欲望と幻想の市場、伝説の投機王リバモア」(エドウィン・ルフェーベル著)、を読んでみることにしました」、と投資アドバイザーのマイケル・ナイストローム氏は切り出す。相場師リバモアをモデルにした小説だが、意外とテクニカル分析の本質を学ぶことができるらしい。ナイストローム氏の話に戻ろう。

「味気の無い教科書が嫌いな人でも、この本なら楽しく読めることでしょう。トレンドライン、抵抗線、サポートレベル、といった言葉は出てきませんが、それらのコンセプトが、様々な状況の中で語られています。小麦相場のエピソードでは、1ドル20セントを超えたら直ぐ買えば儲かる、と主人公は強調し、ブレイクアウトの手法が説明されています。

この小麦の話と、最近12000を突破したダウ指数には共通点があります。小麦は、1ドル10セントと1ドル20セントの間で、長いこと横ばいをしていました。友人たちは、「強気論」と「弱気論」を戦わせますが、主人公はこう言います。「儲けたければ、1ドル20セントを超えたら直ぐ買うんだ!きっと短期間で儲かるよ。」

主人公は、小麦が必ず1ドル20セントを突破することを知っていたわけではありません。しかし、いったん抵抗線が崩れれば、値段の上昇に弾みがつくことを指摘したのです。今日も多くの投資者は、ブレイクアウトで買うことに躊躇します。ダウの場合なら、こんな高値圏では買えない、という理由でせっかくの上放れを逃してしまいます。

先日、知人とレストランに行った時です。知人は、ダウが新高値を更新しているのに、持ち株は全く上がらない、とぼやいていました。これは、決して奇妙な現象ではありません。今日のラリーは、全セクターが参加しているのではなく、一部の大型株だけです。」

たしかに好調なダウ指数だが、この大きな原因の一つは来月に迫った中間選挙だ、とナイストローム氏は言う。「長期的にマーケットをコントロールするのは無理ですが、ダウ30銘柄のように限られた株を一時的に操ることは可能です。中間選挙が目前です。経済状況を良く見せるには、言うまでもなく、ダウ指数上昇が役立ちます。

ブッシュ大統領の共和党が勝利するには、株高が必須です。もし民主党が勝利したら、どんな状況が起きるでしょうか?議会ではイラクでの戦争が真剣に取り上げられ、ブッシュ政権が大きく傾くことになるでしょう。スムーズにブッシュ経済政策を続行させるためにも、どうしても共和党は勝たなければいけません。とにかく選挙が終わるまで、ダウは高値を更新し続けることでしょう。」

株式市場の弱点

四つに組んだら手ごわい相手に、まわしを取らせるわけにはいかない。できれば、立ち上がりから突っ張って、そのまま押し出してしまいたい。勝負の世界では、対戦相手の長所短所を調べることが必須だ。株も勝負の一種だから、とうぜん敵を研究する必要がある。

さて、皆さんが株を買う場合、いったい誰が敵なのだろうか?デイトレーダーのミシェルさんが、こんな話をしている。「私の知っているデイトレーダーですが、勝率95%という、すならしい数字の持ち主がいます。しかし、彼には不思議な癖があるのです。

こんなことができるのは、たぶん豊富な口座資金が関係していると思いますが、とにかく彼は信じられないことをします。思惑が外れたら、即座に損切るのがトレードの掟ですが、彼はよほどのことがない限り、損切りをまったくしないのです。買った場合なら、下がるたびに買い足して、下げ止まるまで執拗に追い続けます。もちろん、大きな穴を口座に開けたことは1度や2度ではないようですが、95%の勝率ですから、最終的に損を取り戻してしまいます。

彼は、素早い損切りが大切であることを知らないわけではありません。現に、彼自身こう語っています。「自分のしていることが間違っているのは、最初から分かっている。しかし、損切りがどうしてもできない。下がる株を買い足し続けることは、明らかにルール違反だ。自分の中に魔物が生息している、としか説明のしようがない。」皆さんも、自分自身が最悪の敵になっていないでしょうか?」

自分との戦いもあるが、株投資者が相手にしているのは株式市場(マーケット)だ。勝つためには、相手の長所短所を把握することが重要、と上記したが、マーケットの長所短所は何だろうか?フール・ドット・コムのブライアン・パカンパラ氏は、2つの弱点を挙げている。

1、過剰反応

分かりやすい例はニュースだ。2005年、薬品の安全性が疑問視されるニュースが報道されて、ファイザーが大きく下げたことがあった。投資者たちは、この悪材料だけに注目して、他の情報にはまったく注意を払うことができなくなり、行き過ぎになるまで株は売られた。

2、極端な一般化

あの人はニューヨーク出身だから短気だ。女性は数学が苦手だ。黒人はバスケットボールが上手い。そんな形で、私たちは物事を一般化するが、株投資でも同様な間違いを犯してしまう。例を挙げれば、出遅れ株狙いだ。オイル株が上げている時なら、既に上げている株ではなく、まだ低迷しているオイル株を買う人たちがいる。セクターが強いのだから、この株が上がるのも時間の問題、という理屈だが、人気の無い銘柄にはそれなりの理由がある。正解は、常にリーダーを買うことだ。

マーケットは、個人と機関投資家で作り上げられている。マーケットの持つ二つの弱点、とパカンパラ氏は言うが、ようするにそれらは、私たちの持つ弱点のことだ。

年末に買える10銘柄

単に避けられている銘柄を狙うのではなく、徹底的に忌み嫌われている株を買え、と経済コラムニストのジム・ジューバック氏は言う。ただし、条件が一つある。買うのは、今直ぐではなく年末まで待つこと。もう少し、氏の説明を聞いてみよう。

「2004年にも同じやり方で、10銘柄を勧めましたが、先ず結果を見てみましょう。投資期間は2004年12月15日から、2005年の12月15日までです。この間、S&P500指数は6%の伸び、そしてダウ指数は+2%でしたが、勧めた10銘柄は平均で14.9%の上昇でした。

買った10銘柄は、Charles Schwab(SCHW)、Hasbro(HAS)、Interpublic Group Of Companies(IPG)、Merck(MRK)、MBNA(バンク・オブ・アメリカに買収されました)、Nokia(NOK)、Reynolds&Reynolds(REY)、Teva Pharmaceutical(TEVA)、Western Digital(WDC)、Westwood One(WON)です。

今回もこのやり方で成功する保証はありませんが、一つ指摘したいことがあります。最近、投資グループによる企業買収が目立ちます。一般的に、資産の豊富な割安株が買収ターゲットになりますから、現在忌み嫌われている銘柄が対象になる可能性が高くなります。

叩かれた株を買う方法で有名なのは、the Dogs of the Dow strategyです。対象になるのはダウ指数に属する30銘柄だけですが、簡単に説明しましょう。たとえ同じ額の配当金でも、株価が下がると、配当利回りは上昇します。ですから、ダウ銘柄の中で最も利回りが高い10銘柄を12月31日に買って1年間持ち続ける、という方法です。成績の方は、ここ2年間は冴えませんが、1928年から2003年を振り返ると、年間平均で13%ほどの利益がありました。

the Dogs of the Dow strategyの問題点は、ダウ30銘柄に限定されますから、あまりにも選択肢が狭すぎます。これが、最近2年間の成績低迷の一原因と思われます。ですから、私はマーケット全体から銘柄を選ぶことにしました。

銘柄選択条件の中で、特に大切なのはレラティブ・ストレンクス(チャートについてくるRSIではなく、マーケット全体との比較)と、現在の株価です。銘柄はレラティブ・ストレンクスが20以下のものに絞りました。これで、下から数えて20%以内で低迷する株が手に入ります。更に、株価も52週間の安値から20%以上離れていないものに限定して、嫌われ度を確かめます。」

それでは、現時点(10月23日)における、今年の年末用の買い10候補を記そう。(注:これは買い推奨ではなく、単なる投資アイディアであることをお断りしておきたい。)

1. Newmont Mining (NEM) 2. Quest Diagnostics (DGX) 3. Red Hat (RHAT) 4. Helix Energy (HLX)
5. NAVTEQ Corp (NVT) 6. Biovail (BVF) 7. Sierra Health (SIE)
8. Vantana Medical (VMSI) 9. Hydril (HYDL) 10. Microsemi (MSCC)

ヤフー復活のカギはコレだ

ヤフー(YHOO)はもう見込みが無いのだろうか?1月9日、43ドル66セントだった株価は、現在たったの23ドル21セントだ。ここまで下がったのだから、そろそろ買えそうだ、と思うかもしれないが、10月に入ってから、ヤフーを格上げしたアナリストは一人もいない。

たとえば、10月20日、スタイフェル・ニコラスのアナリストは、ヤフーを「買い」から「ホールド」に格下げ。10月18日、ドイツ銀行は、目標株価を25ドルから24ドルに引き下げ。同18日、UBS証券は、36ドルだった目標株価を33ドルに下方修正。更に同18日、パイパー・ジャフレーも株価ターゲットを引き下げているから、これでは投資者も足がすくんでしまう。

アナリストの悲観的な意見が18日に集中した原因は、前日の決算発表が大きな原因だ。たしかに予測されたとおりの結果だったが、第3四半期の収益は、去年の同時期を37%も下回った。おまけに、第4四半期の利益はアナリストの予想以下になる、というからガッカリな話だ。

ここで、「マッド・マネー」のジム・クレーマー氏の意見を引用しよう。「業績不振はヤフーだけの問題でなく、業界全体が低迷している、とヤフーは言います。しかし、同業のグーグル(GOOG)を見てください。すばらしい収益を上げています。業界全体が悪い、というのは単なる言い訳です。マズイのはヤフーの経営陣です。

ヤフーが以前のような人気を取り戻すためには、モンスター・ワールドワイド(MNST)を買収する必要があります。モンスター・ワールドワイドは、オンライン求人市場の48%を牛耳っています。それに、多くの新聞社とも提携しています。小型企業買収がヤフー再建に必須ですから、買収ターゲット候補として、モンスターを買うのも一案です。他には、バンクレート(RATE)やザ・ノット(KNOT)も狙えると思います。」

ヤフーの経営陣が悪い、とクレーマー氏は指摘しているが、こんなことも付け加えている。「最高経営責任者、テリー・セメル氏が首になるなら、徹底的な買いを勧めます。とにかく、早急な経営陣の入れ替えがない限り、株価は21ドルまで下げるかもしれません。」

セメル氏の評判は良くない。株掲示板には、セメル非難があふれている。

「セメル氏を直ぐ首にしろ。ヤフーの事より、トム・クルーズの赤ちゃんを見に行くことを優先させているのだから、こんな人は会社に必要ない。」 JOCO52さん

「ヤフーを崩壊させた犯人はセメル氏だ。即刻クビにしろ!」 CTURGRE2さん

引用していたら切りが無い。しかし、これだけ嫌われている株だから膨大な空売り残がある。8月時点で、ヤフーの全空売り残を買い戻すには、3.07日の日数が必要だったが、現在この数字は7.07日に膨れ上がっている。ニュースの内容によっては、一斉の買い戻しが期待できるだけに、ヤフーは注目の一銘柄だ。

来週も金利は据え置き

17回連続の、金利引き上げ最後の日は6月29日だった。8月8日、そして9月20日の連邦公開市場委員会では、金利が据え置かれたが、もちろん、もう二度と連銀は引き上げをしない、と断言することはできない。しかし、こんな事実を経済コラムニストのチェット・クリヤー氏は指摘する。「6月29日から今週までを振り返ってみると、S&P500指数は7.9%の上昇です。低迷が長かったナスダック指数も、7.7%ほど上げています。」

上昇しているのは株だけではない。クリヤー氏によれば、6月の終わり、5.25%の利回りがあった10年物国債は、現在4.75%から4.8%で推移している。利回りの下降は価格の上昇を意味するから、国債も株と同様に好調だ。

「連銀は、うまくインフレを抑制しています」、とINGインベストメントのダグラス・コーテ氏は言う。水曜日に発表された、消費者物価指数の9月分は、オイルやガソリンの値下がりが反映されマイナス0.5%だった。年間ベースでは+2.1%だから、連銀の目標とする方向へたしかに進んでいる。

さて、来週24日と25日の二日間にわたって、連邦公開市場委員会がある。最近、何人かの連銀関係者がタカ派的な意見を述べて、投資者を心配させているが、多くのアナリストは現行の金利据え置き(5.25%)を予想している。

タカ派の代表は、リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー氏だ。9月20日の議事録に、氏の意見が要約されている。「金利据え置きは、インフレを抑える適切な措置ではない。現行のインフレ率を下げるためには、更なる金利引き上げが必要だ。」

据え置きを支持する連銀関係者は、冷え込む住宅市場と、下降するエネルギー価格を挙げている。9月分の住宅着工戸数は、8月分を約6%上回る意外な結果だったが、住宅建築許可数や販売数から分かるように、住宅市場は明らかに冷え込んでいる。ある大手住宅建築業者は、アリゾナ州フィニックス市の新築住宅の売れ行きは際立って悪く、まるでゴーストタウンのようだという。

ここでクリヤー氏は、こんな質問をする。「単に据え置きでなく、金利引下げが近い、と言うアナリストも出始めていますが、もし現行金利がずっと続いたら、株にどんな影響を与えるでしょうか?」金利が安定するわけだから、株には良さそうな気がする。しかし、安定は安心を呼び、それが無謀な投機へつながる危険性を警告するエコノミストもいる。

世界最大の債券ファンドを運用する、ビル・グロス氏の話によれば、金利据え置きが長期間継続することはありえない。「現在の米国経済状態を見る限り、2007年中に連銀は金利を引き下げることになるでしょう。」

膨大な損を出した、アマランス・アドバイザーズから、私たちは何を学ぶことができるだろうか?コネチカット州に本社を置くアマランスは、エネルギー市場専門のヘッジファンドとして、優秀な成績を上げていたが、天然ガス投機に失敗して60億ドル以上の資金を失った。

ここ10年間、ヘッジファンド業界の成長には、目をみはるものがある。現在8000あまりのヘッジファンドがビジネスを展開し、運用されている総資金は1兆2000億ドルを超える。成績の方は、決して全てがずば抜けたものではないが、ほとんどのファンドは、商品市場やエネルギー市場に資金を移すことで、株のベアマーケットをモロにかぶることはなかった。

推定によれば、最近2年間で約25%のヘッジファンド資金が、エネルギー市場に流れ込み、これがオイルやガソリン価格を大きく押し上げる一因になったことは間違いない。高いガソリンは、消費者に迷惑な話だが、高騰が続いたエネルギー市場で、資金を運用したヘッジファンドが直面したリスクも多大なものだ。

天然ガス市場は不安定な価格で有名だが、アマランスは「スプレッド・ポジション」を利用することで、万が一の場合に備えていた。スプレッド・ポジションは、ある限月を買い、ある限月を売る方法を意味し、普通の売買方法より危険度が低いといわれている。

「思い出してほしいのは、90年代の終わりに破綻した、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタルです。ロングタームがつぶれた原因はスプレッド・ポジションです」、とエコノミストのジェレミー・シーゲル氏は言う。まだ、アマランスの細かい具体的な失敗原因は分からないが、シーゲル氏の話を続けよう。

「ヘッジファンドはリスク回避を強調します。しかし、実際に今回のアマランスで分かるように、ヘッジファンドはマーケットが持つボラティリティから逃げることはできません。ある市場が活発になれば、次々と他のヘッジファンドが参入してきます。これが更にボラティリティを増大させ、ファンドの直面するリスクも上がります。

多くのヘッジファンドマネージャーは、商品市場は株式市場から大きな影響を受けることはない、と言いますが、これは間違いです。実例をあげれば、9月11日にニューヨークを襲った惨事です。航空会社だけでなく、株全体が大幅に下げましたが、エネルギー市場も下落したことを忘れてはいけません。

たとえ10年、20年のデータを基にテストしても、ヘッジファンドはマーケットの持つボラティリティを避けられません。十分に検討されたスプレッド・ポジションでも、極端なボラティリティに襲われてしまえば、全くリスク回避ができない事実を、私たち投資者は頭に入れておかなければいけません。」

トレードの本は、本当に役立ちますか?113人に、トマス・ブルコースキー氏(投資家)は尋ねた。92%が助けになった、と回答し、フレッドさんはこう語っている。「先ず、インターネットで徹底的に調べました。書評を読むだけでなく、読者の感想も参考にしました。その結果、良さそうな本だけ買いました。」レジナさんは、「トレードを真剣に考えている人なら、本を読むのは当たり前です。何の勉強もしないで、いきなりトレードすることはギャンブルと同じです」、と述べている。

冗談まじりに、トムさんはこんなことを言う。「ありとあらゆる本を読みました。しかし、読む本を間違っていました。私が買ったのは、テクニカル・アナリシスの本ではなく、ファンダメンタルズに関するものばかりでした。おかげで、会計士に負けぬ知識が身につきました。」

次の質問は、ブログは役立ちますか?65%の回答は、「時間の無駄」、というものだ。「たしかに、株や先物のことが書かれていますが、それはごくわずかで、スポーツや政治の話題が主になっているブログがほとんどです」、とジムさんは指摘する。更に、多くのトレーダーは情報の不正確さを強調している。

ブログが助けになる、という意見を代表するのはリチャードさんだ。「ブログを読むことで、様々な意見に触れることができます。こんな解釈方法があったのか、という発見も時々ありますから、ブログに目を通すことは無駄ではありません。マーケットに対する偏見を捨てるためににも、色々なブログを読むことは有益です。」

三番目の質問は、どうやったらコンスタントに儲けられるようになりましたか?ピーターさんは、三つの条件を挙げる。「先ず、売買ルールを作り上げてください。そして、ルールに忠実に従ってトレードすること。それから、常にテクニカル分析を怠らないことです。」

何人かのトレーダーは、こう語っている。「なかなか利益が上がらないので、タイムフレームを長めの物に変えました。」人によって違うが、1分足チャートから5分足へ、または3分足から15分足へ、といったように長めのチャートに移ることでトレードが好転することもある。

こんな回答も多い。「確実に損切りができるようになったら、利益が出るようになりました。いつもモニターの前に座っている、という理由で実際に損切りのオーダーを入れない人がいますが、それはダメです。買いが成立した時点で、直ぐ損切りオーダーも入れることが大切です。」

最後の質問は、新人トレーダーに何かアドバイスはありますか?ボブさんの言葉を記そう。「これは行けそうだ、といった気分的な理由だけでトレードしないでください。とにかくトレードを習得するには、かなりの時間が要ることを覚えておいてください。」

マスコミは投資者の味方?

騒々しいだけで内容が無い、とセンセーショナルなジャーナリズムを批判するのは、フール・ドット・コムのセス・ジェーソン氏だ。「ダウ指数の高値更新が執拗に報道されました。まるで偉大な記録が樹立されたように聞こえますが、全く意味の無い数字です。単に数値を比べるだけなら、たしかに新記録ですが、インフレを考慮すれば、今日のダウ水準は2000年1月のレベルを10%ほど下回っています。」

明らかに、最近の経済ジャーナリズムを苦々しく思うジェーソン氏だが、マスコミを株投資に利用することができる、と氏は言う。話を続けよう。

「覚えておいてほしいのは、経済ジャーナリストの目的は、情報を提供して投資者を助けることではありません。彼らが一番興味があるのは、刺激的なヘッドラインを利用して、私たちをニュースに引き込むことです。最初から、投資判断に役立つ情報の提供は考えていません。

センセーショナルな報道に、退屈な銘柄を利用することはできません。しかし事実は、マスコミが取り上げなかった地味な株が大きく上げています。たとえば、2000年から今日まで、ダウ銘柄で一番成績が良かったのは、食品のアルトリア、そしてトラクターやブルドーザーで有名なキャタピラーです。前者の伸びは370%、後者は+215%です。

次に、マスコミが無視し続けている、S&P500指数を見てみましょう。まだ2000年のピークから遠く離れている現状ですが、過去6年間、この指数に属する銘柄に投資していたらどうなっていたでしょうか?500銘柄中、200が2倍以上になっています。3倍以上になった株も110あります。

ルーセント (マイナス96%)、ヤフー(マイナス72%)、タイム・ワーナー(マイナス70%)。数字は2000年から今日までの結果ですが、どの銘柄も大きく下げています。覚えている方も多いと思いますが、これらの銘柄は、2000年、マスコミが毎日のように取り上げたものです。次世代をリードする超有望銘柄!、と大々的な報道でしたが、株価は全く冴えません。

次の三つは、マスコミが振り向きもしなかった銘柄です。チェサピーク・エネルギー(+1325%)、コベントリー・ヘルスケア(+1296%)、プルテ・ホームズ(+616%)。

マスコミは、投資者の最悪な敵になる可能性があります。ですから、ニュースを投資に使うことには、細心の注意を払ってください。刺激的な報道を信じて、人気銘柄だけに投資するなら、あなたの口座を救うことは誰にもできません。頻繁に報道される銘柄の中から、本当の宝を見つけるのは無理です。人気化していますから、それらは完全に割高銘柄です。口で言うほど簡単ではありませんが、マスコミが執拗に取り上げる株は、無視した方が無難です。」

少し変わったトレンド確認法

なぜ、ヤフーは下げているのだろう?なぜ、スターバックスは買われているのだろう?「人々は、「なぜ」を気にしすぎます。株投資での成功に、「なぜ」はどうでもよいことです」、と言うのはテクニカル・アナリストのジョン・マーフィー氏だ。

ご存知のように、テクニカル・アナリストは、売上、一株利益、キャッシュフローなどの要素は分析に一切使わない。チャートと指標だけが頼りだから、多くのデイトレーダーやスイングトレーダーは、テクニカル・アナリストの意見に耳を傾ける。

テクニカル・トレードはテクニカル分析を基盤にした売買方法だが、これには10の基本ルールがある、とマーフィー氏は言う。いくつか見てみよう。

1、トレンドの確認

先ず、月足チャートや週足チャートを使って、ここ数年間のトレンドを確認しよう。それが済んだら日足チャートで中期トレンドを調べ、その次に日中足で短期トレンドを確かめよう。私は短期トレード専門だから週足は見ない、という人がいるが、短期チャートの騙しに惑わされないために、長期チャートを使うことは大切だ。

2、トレードをトレンド方向に合わせる

日足チャートで売買する人なら、トレンドを決定するのは週足チャートだ。週足が上げ基調なら買いだけを考慮して、日足チャートで買いのタイミングをつかもう。60分足でトレードする場合なら、トレンドを決めるのは日足チャートになる。だから、日足が下げ基調なら、60分足で空売りのタイミングを探す。

3、高値と安値の確認

以前の高値と安値は、レジスタンスレベルやサポートレベルになりやすい。また、以前のサポートレベルがレジスタンスレベルに、そして以前のレジスタンスレベルがサポートレベルになることが多いから注意したい。たとえば、30ドルにレジスタンスラインが走っていたとしよう。株価がそこを突破すると、30ドルのレジスタンスラインはサポートラインに変わる。

4、値戻しレベルを頭に入れる

上昇する株は、必ず利食われて下げが始まる。これが押し目買いの機会になるわけだが、半値戻し(50%)や38.2%レベルを頭に入れておこう。

トレンドを確認しろ、とマーフィー氏は指摘するが、実際にはどうやって確かめるのだろう。トレンドラインや移動平均線が一般的に利用されるが、ここでストキャスティクスを使った方法を紹介しよう。

ストキャスティクスは、ジョージ・レーン氏によって考案され、%Kと%Dと呼ばれる2本のラインが使用されている。一般的には買われ過ぎ、売られ過ぎの判断に利用されるが、トレンドを見る場合は%Kの1本だけが要る。パラメーターは39に設定して、数値が50より上ならアップトレンド、そして50より下ならダウントレンドだ。例として、ペプシコーラの日足チャートを載せておこう。

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AP通信の報道によると、大手証券会社モルガン・スタンレーは、積極的にニューヨーク・タイムズ(NYT)を買っている。既に集めた株数は全体の7.62%に相当し、7月は6.6%の比率だったというから、真相はさておき、とにかく買ってみよう、と個人投資家たちも動き始めた。

割安を理由に、モルガン・スタンレーはニューヨーク・タイムズを買っているようだが、ここで週足チャートを見てみよう。

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全体的な流れは、矢印の方向が示すように下向きだ。しかし、7月の終わり頃から横ばい状態になり、AP通信などの報道がキッカケになり、NYTは今週このレンジから飛び出た。それでは日足チャートに移ろう。

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木曜の大陽線の高値を抜いたら買ってやろう、という強気なやり方もあるが、ストキャスティクスは買われ過ぎゾーンだ。上昇する短期トレンドラインへの、値戻しを待った方が良いだろう。

攻撃的な人なら、こんなことを言うだろう。「ただ値戻しを待つのは面白くない。よし、短期トレンドラインを目標に空売りだ。」下は30分足チャートだ。

前日の高値が壁になって、弱気なローソク足ができている。だから、空売りはこのローソクの安値割れがエントリーポイントだ。もちろん、逆に前日の高値を超えるようなら、直ぐ損切らなくてはいけない。下の上昇する赤いラインは、目標になる日足に走るトレンドラインだ。ストキャスティクティクスも買われ過ぎレベルだから、NYTが一時的に下がる可能性を示している。

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上記したように、モルガン・スタンレーがニューヨーク・タイムズ(NYT)を買っている理由は「割安」だからだ。本当に割安かどうかを確かめるには、現在の株価と正当評価額を比べる必要がある。

8人のアナリストたちの意見を総合すると、ニューヨーク・タイムズは向こう3年間で、8.5%の一株利益上昇が見込まれる。売上、キャッシュフローなどの他要素も含めて計算すると、NYTの正当評価額は26ドル56セント、ということだから、現在の株価(23ドル76セント)は割安だ。

NYTの競争相手を見てみよう。先ず、経済ニュースで有名なダウ・ジョーンズ社の現株価は33ドル94セント、そして正当評価額は21ドル98セント。ニュース・コープの金曜終了値は21ドル59セント、そして正当評価額は19ドル32セントだ。

他社と比較しても割安なNYTだから、アナリストは買い推奨を出している、と思うかもしれないが、買いを勧めるアナリストは一人しかいない。だからと言って売り推奨が多いわけではなく、ほとんどのアナリストは「ニュートラル」、という煮え切らない態度を示している。

株が割安なのは、人気の無い証拠だ。はたしてモルガン・スタンレーのNYT買いニュースは、今週も効き目があるだろうか。注目してみたい。


すばらしいタイミング!?

「単なる偶然だろうか、と疑ってみたくなりますが、この際それは考えないことにします」、と切り出すのは、経済コラムニストのローリー・クリコースキー氏だ。ことの発端は、あるアナリストが発表した格下げなのだが、氏の話を続けよう。

「バンク・オブ・アメリカのアナリスト、マイケル・ヘクト氏は、オンライン証券会社、アメリトレード(AMTD)の格付けを「買い」から「ニュートラル」に引き下げ、目標株価を20ドルちょうどに設定したことを10月6日に発表しました。この格下げ発表は、バンク・オブ・アメリカが関係者を驚かすことになるニュースを出す5日前です。

10月11日、全米で第2位の巨大銀行バンク・オブ・アメリカは、一定の条件を満たした預金者に、株取引手数料ゼロを実施することを発表しました。全く予期されなかったニュースですから、オンライン証券会社の株が売られ、アメリトレードは12%の大幅下落です。」

このニュースに関して、人気番組「マッド・マネー」のジム・クレーマー氏は、こう語っている。「バンク・オブ・アメリカの決定で、アメリトレード、Eトレード、チャールズ・シュワブのようなオンライン証券会社が苦しい状況に直面します。こんなにインパクトの大きな発表を、だれも予期していなかったのは事実です。現に、ニュースの出る数日前、私はアメリトレードの最高経営責任者に会いましたが、バンク・オブ・アメリカのことなど、全く話題になりませんでした。

銀行ではなく、同業のオンライン証券会社からのニュースなら、それなりの対応策はあると思います。しかし、大手銀行からの挑戦ですから、はたしてどの程度のダメージになるかが正確に予測できません。正にオンライン証券会社にとって脅威です。どちらにしても、収益が下がることになるでしょう。」クリコースキー氏の話に戻ろう。

「アメリトレードの格下げを発表した時点で、ヘクト氏がバンク・オブ・アメリカの重大ニュースを知っていた、という証拠はありません。しかし、このあまりに良いタイミングには、どうしても首をかしげたくなります。

ヘクト氏が格下げをした理由は、ここ数カ月間でアメリトレードの株価が、あまりにも上げすぎたためです。今年の7月から、オンライン証券会社の株価は平均で16%の上昇だが、アメリトレードは37%の上昇だ、とヘクト氏はレポートに記しています。」

早速バンク・オブ・アメリカの広報担当者は、「ヘクト氏は重大発表について何も知らなかった」、と記者会見で述べ、業界の規則は厳重に守られていることを強調した。さて、クリコースキー氏によれば、オンライン証券株が売られた翌日、ヘクト氏は「オンライン証券株は売られ過ぎです」、という発表をしたそうだ。

5つの心配材料

好調なマーケットだ。テレビでは、ダウが史上初めて1万1900ドルを突破した、とやや興奮気味に報道している。歴史的に、第4四半期の相場は強い、などと付け加えるから、ますます買い手が強気になってしまう。押し目を待つ投資家には嬉しくない展開だ。

それでは、どんな事が起きたら投資者たちは考えを一変させるだろうか。ビジネス・ウィーク誌が指摘する、いくつかの材料を見てみよう。

1、住宅市場

今年、住宅セクター指数は既に17%の下落だ。連銀のバーナンキ議長によれば、住宅市場の低迷は米国経済の成長率を1%減らすことになる。問題なのは、住宅市場が予想以上に悪くなった場合だ。ゴールドマン・サックスの、エド・マッケルビー氏は、こう述べている。「私の見方はアナリストの中でも悲観的な方ですが、現在の住宅市場は、既に予想以上に悪い状態です。」

投資戦略家(チャールズ・シュワブ)のリズ・アン・ソンダース氏は、「住宅市場の下げサイクルはまだ続きます」、と述べ米国株をポートフォリオから5%減らして、現金化することを勧めている。

2、企業収益

S&P500指数に属する大手企業収益は、17四半期連続で二桁成長だ。しかし、下降する商品価格、それに減速する米国経済は企業収益にマイナス材料になる可能性がある。シティグループのスティーブン・ウィーティング氏によれば、特に商品生産者の成長率が大幅に下がり、S&P500の企業は、2006年度の+15.4%から2007年度は+7.4%に落ち込むことを予測している。

3、不景気

おだやかな経済減速ではなく、利回り曲線は、不景気を予想している、と言うアナリストたちもいる。現在、10年物国債の利回りは、短期金利を0.5ポイントほど下回っている。歴史を振り返ると、この差が1ポイントを超えると、雇用状況悪化が顕著になり不景気に陥る。

4、インフレ

最近のマーケットが好調な理由の一つは、金利引下げ期待がある。しかし、連銀は投資者たちが思っているほど早急に利下げを行わない可能性もある。議事録からも分かるように、連銀は相変わらずインフレの心配をしている。ここ数週間、オイルやエネルギー価格は下げ方向だが、これが再度上げに転ずるなら、言うまでもなくインフレ材料だ。

5、地政学的な問題

先日発表されたレポートによれば、アナリストやエコノミストは、テロリズムが米国経済に最も大きな短期的ダメージを与える、と答えている。それ以外にも、中東での紛争、そして北朝鮮もマーケットには不安材料だ。PNCアドバイザーズのジェフ・クライントップ氏は、イランの動きに注目することを強調している。

テロ、と一口に言っても、当然ながら全てのテロ活動がマーケットに悪影響を及ばすわけではない。マーケットに大打撃を与えるには、5年前の世界貿易センターのような過激な事件が必要だ、と多くのアナリストは語っている。

注目の新規公開株

サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コープ(SAI)が株式市場にデビューする。最終的な公募価格は木曜に決定され(予想は13ドルから15ドル)、そして翌日金曜が初取引だ。幹事証券会社はモルガン・スタンレーとベア・スターンズ、合計で7500万株が発行される。

なぜ注目されるのか?5年前の9月11日以来、テロリズムがアメリカ人に現実の問題となった。テロリストに対抗するには、正確な情報収集が必要になり、そのためには最新のテクノロジーが要る。そんな要望に応えるのが、サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コープ(SAI)だ。

テロ対策(カウンターテロリズム)、企業の機密保持、密輸発見などに使えるソフトウェアやハードウェアの開発だから、SAIの主な収入源は米国政府機関だ。ザ・ストリート・ドット・コムによれば、SAIの技術はロッキード・マーチン(LMT)やノースロップ・グラマン(NOC)に匹敵するようだから、軍事関連銘柄の人気株になる可能性がある。

新規公開株には若い企業が多い。SAIが創立したのは1969年、そして現在の社員数は4万3100人だから、昨日今日に始まった会社ではない。若い会社には爆発的な伸びが見られるものだが、SAIは安定している。2005年から2006年の成長率は8.4%だから、投資者によっては物足りないかもしれない。しかし、77億ドルを超える収益、と聞いたら無視できなくなるだろう。

さて、新規公開株から核実験で問題になっている、北朝鮮に話題を移そう。「ナイーブかもしれませんが、これで地球最後の日が更に近くなった、という見方には反対です」、と言うのは経済コラムニストのジェームズ・スチュワート氏だ。「たしかに予測が難しい国ですが、たとえ北朝鮮であったとしても、私は核兵器を実際に使うことはないと思います。」

まったく人騒がせな国だが、スチュワート氏は、これが新興市場を見直す良い機会であることを指摘する。「新興市場の成長が話題になっていますが、5月がピークになり、その後は冴えない展開です。例をあげましょう。iShares MSCI Emerging Markets Index fund(EEM)は、新興市場に投資をする上場投信です。5月に111ドル10セントの高値を記録し、6月には82ドルまで下げ、現在99ドル付近で取引されています。過去3年間を振り返ると、EEMの年間平均成長率は+28%です。北朝鮮が心配材料になった今日、もはや28%といった高成長は難しいと思われます。

しかし、こんな状況でも新興市場の一つである韓国は買えそうです。もちろん、韓国が北からの脅威を一番受けていることは承知です。今年、韓国の株式市場は4%以上の下げです。株価収益率(PER)は約11ですから、まだ比較的割安なレベルです。積極的な買いは勧めません。あくまでも割安が主な理由ですから、Korea Fund (KF)やKorea Equity Fund (KEF)の上場投信が狙えると思います。」

ヘッジファンドの黄金時代は終わった、と経済コラムニストのデービッド・ワイドナー氏は言う。「先ず、カン違いしてほしくないのは、私はロン・インサナ氏を侮辱しているわけではありません。株式番組のコメンテーターとして、氏の冷静な意見は、多くの視聴者に有益であったことは間違いありません。しかし、インサナ氏がヘッジファンドを始める、というニュースを聞いた今日、投資者はヘッジファンドから資金を引き上げる時が来たように思われます。」

最近では、天然ガス市場で大きな損を出したアマランス・アドバイザーズが話題だが、ヘッジファンド・リサーチ社の報告によれば、2005年1月以来2600の新ヘッジファンドが誕生している。いくら何でも異常な増え方だ。ワイドナー氏の話に戻ろう。

「株式コメンテーターが本業を離れてヘッジファンドを始めるのですから、今の証券業界は、お祭り気分にひたっています。もちろん、ヘッジファンドが無くなってしまうことはありません。これからもヘッジファンドは、優秀なトレーダーたちに活躍の場を与えることになるでしょう。それに、ヘッジファンドは1兆2000億ドルを超える巨大産業です。

ナラガンセット・マネージメントLP、ベガ・アセット・マネージメント、パイレート・キャピタル、そしてアマランス・アドバイザーズなどの名前をあげることができますが、どれも投機に失敗して多大な損を出しました。シーバート・ファイナンシャルの創始者、ミュリエル・シーバート氏は、こう述べています。「ヘッジファンドによる積極的なレバレッジの利用は、株式市場や先物市場に大きな脅威になっている。年金ファンド資金もヘッジファンドに流れているが、これは株式市場にとって警戒シグナルだ。」

適切なレバレッジ利用は投資に効果的ですが、シーバート氏が言うように、攻撃的なレバレッジ利用をするヘッジファンドが失敗すると、損額は膨大なものになります。これはマーケットに悪影響を与えるだけでなく、場合によっては政府からの助けが必要になりますから、納税者にも被害を及ぼします。

有能なトレーダーが、ヘッジファンドに引き抜かれています。各証券会社は破格なボーナスや年俸を提示して、やり手トレーダーだけでなく、平均的トレーダーの流出防止に懸命です。全く人気の衰えないヘッジファンド、というイメージがありますが、SACキャピタル・アドバイザーの創始者、スティーブ・コーエン氏によれば、機関投資家たちは、以前のようにヘッジファンドを積極的に利用しなくなったようです。

コーエン氏は更に、個人資産家たちも従来のヘッジファンドに興味を失い始め、プライベート・エクイティ(未公開株式)などに資金を移していることを指摘しています。どちらにしても、これだけヘッジファンドの数が膨れ上がった今日、以前のように、50%、80%といった成績を出すことが難しくなったことは事実です。」

天然ガス市場で60億ドルにおよぶ大損を出したヘッジファンド、アマランス・アドバイザーズとは対照的なのが、ヒューストンに本拠地を構えるケンタウルス・エネルギーだ。ファンドマネージャーは、今年32才のジョン・アーノルド氏、ここまでの成績は+200%だから、間違いなく投資者は喜んでいることだろう。

エネルギーを専門に投機するケンタウルスだから、もちろん天然ガス市場にも参入している。「ケンタウルスは、アマランスの危機を感知していたと思います。ですから、苦しくなったアマランスのポジションを分析して、天然ガス市場で多大な利益を得た可能性があります」、とエネルギー・コンサルタントのアート・ゲルバー氏は言う。

2005年度も、ケンタウルスは優秀な成績を残している。この年、サイタデル・インベストメント・グループやリッチー・キャピタルがエネルギー市場で失敗しているが、ケンタウルスのリターンは+160%だった。2003年、2004年もずば抜けた結果だったから、トレーダー・マンスリー誌によれば、去年ファンドマネージャー、ジョン・アーノルド氏が稼いだボーナスと年俸は1億ドルに達している。

投資者は喜んでいるだろう、と記したが、ここ数年間、ケンタウルスは一切投資者を受け入れていない。そればかりか、投資者に資金を返し始め、最終的にはアーノルド氏の個人資金と、ごく限られた同僚の資金だけを運用することになるようだ。

どうしてアーノルド氏は、こんな素晴らしい成績を上げることができるのだろうか?多くのインタビューが申し込まれるが、先ず氏が承諾することはない。時おり、エネルギー業界専門誌に、アーノルド氏の談話が載ることがある。具体的なトレード方法に触れることはないが、「トレードのチャンスは、マーケットが妥当な価格から大きく離れた時に起きる」、ということだ。

アーノルド氏は、ヘッジファンド業界のスターであることは間違いない。極端にマスコミを避けているから、氏の私生活が話題になることはない。しかし、ダウジョーンズ社から、こんな報道があった。

ジョン・アーノルド氏は、ヒューストンにある「ドッグウッズ」という名前で知られる、歴史的な建物を購入した。すぐ隣にはバイユー・ベンドと呼ばれる、ヒューストンの美術館が所有する建物もあり、素晴らしい内装で有名だ。しかし、アーノルド氏は「ドッグウッズ」の取り壊しを始めた。言うまでもなく、市民たちから反感を買うことになる。

アメリカの歴史を壊した、表向きにはそんな理由で氏に反対しているが、本音は全く違う。アーノルド氏は、以前エンロンのエネルギー・トレーダーだったのだ。腐敗の象徴エンロン破綻で、従業員たちは401Kに積み上げてきた老後の資金を全て失った。アーノルド氏が購入した物件は、以前のエンロン役員たちが住んでいた高級住宅街の隣だったのだ。これでは反感を買っても仕方ない。

新高値を達成したダウ指数、S&P500も5年半ぶりの高値だ。「乗り遅れた!」、と悔やんでいる投資者に、「ベータ」の利用を勧めるのは、経済コラムニストのジム・ジューバック氏だ。「この調子で行くと、第4四半期も健全なラリーが期待できそうです。皆さんは、十分にベータを活用していますか?」何の事だろうか?ジューバック氏の話を続けよう。

「もし皆さんも私のように強気な見方なら、今こそベータを再検討する良い機会です。株の世界に、100%確実なものはありませんが、ベータを活用することで、次のマーケットラリーに乗り遅れることを防ぐことができます。繰り返します。あなたのポートフォリオがベータ不足なら、またラリーを逃すことになるでしょう。

さて、ベータとは何でしょうか?近代の金融理論によれば、投資ポートフォリオは、二つの要素に影響されます。先ず、ベータと呼ばれる、マーケット全体の方向性、そしてアルファと呼ばれる個人の投資技術です。MSNなどで、ベータは簡単に見つけることができます。たとえばマイクロソフトですが、右下の方にベータが記されています。

ベータは各株のボラティリティ(株価変動率)を、マーケット全体のボラティリティと比較したものです。マーケット全体、というのはS&P500指数を示し、このベータは常に1です。ベータ値の高い銘柄は、上げ相場においての上昇幅が大きくなり、下げ相場においての下降幅も大きくなります。

実例をあげましょう。9月のラリーで、S&P500指数は2%の上げでした。この間、ベータ値が1.1だったディズニーは4%の上げ、そしてベータが1.43だったAT&Tは5%の上げを展開しました。5月、6月の低迷マーケットでは、S&P500指数は8%下げました。ベータが2.21だったインテルは12%の下落、そしてベータが4.01だったNvidiaは37%の大幅下げとなりました。

ベータ値の低い銘柄は、マーケットよりも株価変動率が少なくなります。たとえば、春、マーケットは8%下げましたが、ベータが0.36だったウェルズ・ファーゴー銀行は3%の下げ幅でした。ベータが0.59だったペプシコーラは、±0という結果でした。」

強気なジューバック氏だが、第4四半期にラリーが見込める理由は5つある。

1、金利の安定とオイル価格の下降。

2、二桁の成長が見込める企業収益。

3、9月の好調なマーケットで、ファンドマネージャーは豊富に持つ現金を株式市場に投入する。

4、いまだに膨大な空売り残があり、この空売りの買い戻しが上昇に弾みをつける。

5、歴史的に、年末のマーケットは強い。

準備はできていますか?

1987年、10月19日、投資家には忘れることのできない日だ。黒い月曜日、ダウ指数は508ポイントの暴落となり、一日で23%の価値を失った。「引っ切り無しに電話がかかってきました。泣いている人もいました」、と当時証券会社に勤務していたリンダ・ネイラー氏は言う。

暴落の時のように、センセーショナルな報道はされなかったが、2000年から約2年続いたベアマーケットも嫌な思い出だ。5000ドルを超えていたナスダック指数は1200ドルを割り、多数の口座が被害を受けた。特にひどかったのがインターネット銘柄だ。倒産する会社も続出したから、全資金を失う投資者も珍しくなかった。

「大きな損を出すのは、とてもつらいことです。しかし、現に株式市場には、良い時と悪い時の周期があります。私たち投資者にとって重要なことは、厳しい環境に耐えることができる準備をしておくことです」、とフール・ドット・コムのリチャード・ギボンズ氏は言う。バリュー株の長期投資を専門にする氏の話を、もう少し聞いてみよう。

「最初に言っておきたいことは、損を出すことは悪いことではありません。かすり傷なら直ぐ回復できますが、足を切断するような重症では、元に戻すことは無理です。ベアマーケットで重傷を受けた人たちには、ある共通点がありました。持ち株がハイテクノロジー銘柄に集中していたのです。

2000年のベアマーケットで、徹底的に叩かれたのはハイテク株です。例をあげましょう。IT企業のCAインクは、2000年1月、70ドルで取引されていましたが、2002年の7月には、たった7ドル50セントでした。通信機器で有名なノキアは、48ドルから10ドルに転落です。もし今日まで両銘柄を持っていても、CAインクは23ドル、そしてノキアは19ドルですから、2000年のレベルにはまだまだ手が届きません。

カン違いしてほしくないのは、ハイテク株は危険だ、と私は主張しているのではありません。指摘したいのは、資金を一つのセクターだけに集中させず、分散投資することの重要性です。バンガード社の不動産ファンドが2000年から2倍になったように、建築関連やエネルギー関連に資産を分散していれば、たとえハイテクが不調でも、口座全体が下がってしまうことはありません。」

ギボンズ氏は、更にこんな忠告をする。「アナリストの言うことを、単純に信じてはいけません。株式市場は慈善団体ではありません。アナリストは予想をするのが好きです。最近では、オイルは1バレル110ドルを突破する、というのがありましたが、実際は逆に下げています。

インターネットバブルが崩壊する寸前、アナリストたちはインターネット・キャピタル・グループは250ドルに達する、という予想を発表しました。今日の株価は、たったの9ドル70セントです。当然、口座に大きな穴を開けた投資者が多数いることでしょう。覚えておいてほしいのは、証券会社は、個人投資家の味方ではありません。」

ここまでは順調

どちらを信じたらよいのだろうか?高値を更新した株式市場を信じるなら、アメリカ経済は急激な後退に陥ることなく、安定成長が期待できる。しかし、相変わらず短期金利を下回る国債は不景気を予測している。どちらが正しいのだろうか?経済コラムニスト、キャロライン・バウム氏の意見を聞いてみよう。

住宅市場が最盛期を過ぎた今日、いまだに明るい材料は企業収益だ。第2四半期の成長率は、前年度同時期を18.5%上回り、最近4年間の平均成長率を、やや超えている。更に、2001年の不景気時代から計算すれば、GDP(国内総生産)は29%の伸びにすぎないが、企業収益は二倍に膨れ上がっている。

「企業収益は、米国経済の方向を決定する重要な指標です」、とエコノミストのゲール・フォスラー氏は言う。「アメリカが不況に陥る前には、企業収益の下降が3四半期から7四半期連続で起こります。ですから、現状を見る限り、アメリカが直ぐ不景気に襲われる可能性はありません。一つ指摘しておきましょう。金融セクターはまだ大丈夫ですが、それ以外のセクターは頭打ちです。」

第2四半期、金融セクター以外の業種は、成長率が第1四半期を3.6%下回った。2005年、ハリケーン・カトリーナの時を除けば、企業収益が下がったのは、2003年の第1四半期以来初めてだ。

もし、逆利回り曲線が正しいなら、米国経済は平均以下の成長率期間を迎えることになる。とすれば、株も低迷するはずだ。しかし、ITGホーニック社のエコノミスト、ボブ・バーベラ氏は、「株と国債の両方が好調になることは、決して矛盾していることではありません」、と言う。

「経済が減速する中間サイクルでは、よくこのような現象が起きます。連銀は金利引き上げを終了させ、これは国債買いの原因になり、利回りが下がります。株式市場は、経済の下降には目を向けず、金利引き上げ終了=金利引下げ、ということに注目しますから、これは買い材料になります。」

多くのエコノミストは、現在の逆利回り曲線を問題にしない。世界的、特にアジアの国々が豊になり、有り余る資金を抱えるようになった。高い利回りを得ることよりも、安全な投資場所として、アメリカの国債が選ばれ、膨大な資金が流入した。これが低利回りの最大の原因であり、今日の逆利回り曲線は不景気を予測していない、というわけだ。

ダウは高値を更新したが、アメリカの株はまだ割安、と言う外国投資家たちもいる。過去5年間、S&P500指数は、たった25%上昇しただけだ。80ある世界の主要株式指数の中で、S&P500は下から10番以内に入る低迷指数だ。

S&P500指数と、ファンドマネージャーの成績がよく比較される。S&P500が+8%、そしてファンドマネージャーが+15%なら、優れたファンドマネージャーだ。だから、たとえ年間で5%の損を出しても、S&Pがマイナス7%なら、優秀なファンドマネージャーという評価を得ることができる。

「問題なのは、多くのファンドマネージャーが、S&P500指数を上回る成績を、コンスタントに上げることができないのです」、と語るのは経済ジャーナリストのトーマス・コスティジェン氏だ。もちろん、これは新しいニュースではない。時おりマスコミは、半分冷やかしで、冴えないファンドマネージャーの成績を話題にしているから、投資者たちはS&P500を破ることの難しさは承知している。

しかし、プロに任せるのだから、やはり優れたリターンが欲しい。ファンドマネージャーも、良い成績を残さなければ投資者に逃げられてしまう。うまい解決方法はないだろうか?コスティジェン氏の話に戻ろう。

「簡単に言ってしまえば、S&P500指数を買えば、それに近い成績を出すことができます。これが指数ファンド(インデックス・ファンド)が生まれた原因です。投資者たちからも圧倒的な支持を受けて、ミューチュアルファンドには数多い種類がありますが、今日、インデックス・ファンドが最大の規模になりました。」

積極的なファンドマネージャー、そして消極的なマネージャーがいるが、ロバート・コソースキー氏(英国インペリアル大学)は、こんな発表をしている。「積極的なファンドマネージャーは、下げ相場において、指数を3%ほど上回る成績を上げています。しかし、上げ相場では逆に2%ほど下回っています。」(積極的なマネージャーの特徴には、頻繁な銘柄入れ替えや、限られた数の銘柄への集中投資などがある。)

ジェーソン・トマス氏(コーチス・フィッツ社)は、こう付け加える。「ヘッジファンド・マネージャーのように、投資スタイルが積極的になればなるほど成績が悪くなります。」この言葉で思い出すのが、先日報道されたヘッジファンドのアマランスだ。天然ガスに集中投資して、35%以上の損を出し、投資者は解約したくても解約できない状態だ。

ジェーソン・トマス氏自身も、約20億ドルの資金を運用している。正確に言えば、氏は預かった20億ドルを、ファンドマネージャーたちに運用させている。「積極的なファンドマネージャーを使うことは止めました。積極的だからといって、いつも良い銘柄を選べるわけではありません。それよりも、安定している消極的なファンドマネージャーを使った方が無難です。」

それでは、一般投資家はどうしたらいいのだろうか?「ベアマーケットなら積極的なファンドマネージャーのいるファンドを選び、ブルマーケットならインデックス・ファンドに投資することです」、とコソースキー氏は勧める。

ソフトランディングは幻

「1990年3月、60万ドルちょうどで家を買いました」、とエコノミストのベン・スタイン氏は言う。場所は海岸で有名なカリフォルニア州のマリブ、2年間あちこち探し回って決めたようだ。「90年といえば不動産が大人気でした。5年前は30万ドルほどの物件でしたが、場所が場所だけに、たとえ不動産人気が衰えても、たいした値下がりは無いだろう、と楽観していました。」

運が悪いことに、氏が家を買った一カ月後から住宅市場の下げが始まった。「暴落の中の暴落、そんな表現がされたくらいですから、タダだ、と叫んでも引き取る人はいません。購入してから3年後、物件の価値は35万ドルまで下げていました。全く絶望的な状態でしたが、また不動産ブームがやって来ました。2005年、物件はなんと180万ドルになったのです。そして2006年、住宅市場の冷えこみが顕著になり、もはや180万ドルは夢の値段になりました。」

最初から投資目的ではなく、住むことが目的で買った家だから、別に失敗談ではない。しかし、極端に動いた住宅価格には、ある真実が隠れている。スタイン氏の話に戻ろう。

「物件価格の大きな下落を見て分かることは、住宅市場にソフトランディングは存在しない、ということです。キビシイ下げ方でしたから、正にハードランディングでした。ここは環境が特に良いから下げ渋るはずだ、と人々は言いますが、完全に現実を無視した考え方です。冷えこみが進む状況では、どんなに値段を下げても売れません。

いや、今回は違う。今日も、そんな声が聞こえてきます。たしかに金利が上がりましたが、住宅ローンの金利は、決して高すぎるレベルではありません。米国経済も成長が続いています。また、最近ガソリンやオイルの値段も下がっていますから、消費者には明るいニュースです。

歴史を振り返るなら、住宅市場はあと2年ほど下げます。低迷が5年間に及ぶことも希なことではありません。景気には好不況の波があります。賢い投資家は、不景気な時に買い出動します。私が買ったマリブの家は賢い例ではありませんが、景気が低迷している時に買った他の物件では、良い利益を上げることができました。」

株投資に関して、スタイン氏はこう付け加えている。「もう何年も前から、新興成長市場ファンド(EEM)への投資を薦めてきましたが、タイでのクーデタや商品市場の大幅下落で、新興成長市場ファンドも下げています。長期的に見れば、アジア諸国の成長が、ここで終わってしまうことはありません。商品市場も、現在の下げは長期アップトレンドにおける、一時的な下げです。友人のレイ・ルシアが言うように、この下げは良い買い機会だと思います。」

「愛されすぎた株は避けるべきです」、と言うのはシェイファーズ・インベストメント・リサーチのクリス・ジョンソン氏だ。先週、ビジネス・ウィーク誌のインタビューで語られた言葉だが、マイクロソフト(MSFT)、インテル(INTC)、そしてアップル・コンピュータ(AAPL)などの大型株が、氏の警戒リストに入っている。インタビューの要点を記そう。

「二回連続の金利据え置きで、マーケットは既に上げが始まっていますが、こんな状況でも慎重に調べれば、買える銘柄はいくつかあります。アップルが買えない理由ですか?今日のアップルには、2年前のような革新的アイディアがありません。これが決算に反映されるのは、時間の問題だと思います。

最近のマーケットは、特にダウ指数が、とても好調です。長期、そして中期サポートレベルから跳ね返り、見事なラリーを展開しています。2回の金利据え置きで、多くの投資者たちは、金利引き上げが終了した、と結論したようです。短期的に見ると、現在のマーケットは、買われすぎレベルに達していますから、そろそろ利益確定の売りが来るでしょう。もちろん、それは押し目買いのチャンスです。

投資心理を測定するために、プット・コール・レシオ、それにボラティリティ指数などを利用しますが、はっきりとしたシグナルを得ることができません。実際に投資家たちからアンケートも取りますが、これもはっきりしません。ですから、現在の状態を見る限り、投資者たちは極めて強気でもなく、かと言って弱気に傾いているわけでもありません。繰り返しになりますが、利食いの売りが、そろそろあるはずですから、短期的には買いの機会がやって来ます。

エコノミストやアナリストは、米国経済の減速を予想していますが、今日のマーケットはテクニカル要素に反応し、ファンダメンタルズを無視しています。ようするに、サポートラインやレジスタンスラインが重要視されているわけですから、テクニカル分析を怠ってはいけません。

狙える銘柄ですか?いぜんとして、テレコミュニケーション銘柄が有望です。テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にもテレコミュニケーション・セクターは優れています。具体的には、長距離電話会社のAT&T(T)です。」

一つ付け加えておこう。今朝、クリス・ジョンソン氏の警戒リストに入っていたアップルが格下げされた。格下げをしたのは、シティグループのアナリスト、リッチ・ガードナー氏だ。「収益が予想に達することは難しい」、と判断され、買い推奨からホールドに引き下げられた。まだ大引けまで時間があるが、アップルは2.7%下げて、74ドル87セントで取引されている。

瞬時突破する場面もあったが、ダウ指数は三日連続で高値を更新することができなかった。たった30銘柄で構成される指数だから、もちろん、マーケット全体を反映しているわけではない。現に、S&P500指数が2000年のレベルに復帰するには、まだ16%の上昇が必要であり、ナスダック指数は2倍以上にならなくてはいけない。

10月のマーケットが始まる。米国経済は、過去3年間のような成長が望めなくなり、ソフトランディングが濃厚になった。「経済は過熱することなく、ゆっくりとした成長になるでしょう。金曜日に発表される雇用統計にも、それが確認できるはずです。金利引下げの時期はまだですが、連銀は金利据え置きをしばらく続けると思われます」、とUBS証券のモーリー・ハリス氏は言う。

最近、オイルやガソリン、それに長期金利が下がっている。ビジネス経営者や消費者には嬉しいニュースだが、ハリス氏は、こう指摘する。「たしかに、消費者にとって良い環境になってきましたが、住宅市場の低迷は続くことでしょう。連銀は、最終的に金利を引き下げることになりますが、住宅市場が完全に冷え込んでしまえば、たとえ低金利になっても肝心な借りる人がいません。」

ハイ・フリークエンシー・エコノミクス社の、イアン・シェパードソン氏はこう語る。「住宅ローンの利子が、6カ月ぶりの低レベルになりましたが、これは単に数字上の話です。住宅ローンの平均金利は6.3%ですが、実質金利は8%です。ここ12カ月間で、住宅価格は平均で1.7%下がっています。ですから、6.3%に1.7%を足すことで、実質金利の8%を計算することができます。1年前の実質金利はマイナス10.6%でしたから、今日の金利が、いかに割高であるかが分かると思います。」

生産分野の健康度を見る、ISM指数(9月分)が月曜に発表される。8月、54.5%だった数値は、53.7%に下降することが予想されている。50%以上の数字は成長を表し、52%を割ると危険シグナルが発せられる。歴史的には、金利引下げは、ISM指数が50%を大きく下回った時に実施される傾向がある。

二回連続で下げた耐久財受注、そして予想以上に悪かったフィラデルフィア連銀からの経済レポートがあった後だけに、今回のISM指数は注目される。住宅市場の冷えこみ、それに個人消費の低下に対抗するには、企業による積極的な設備投資が必要だ。それが無くては、ソフトランディングが実現しない。

次に注目されるのが、金曜の雇用統計だ。失業率は変わらずの4.7%、新規雇用は12万6000人増の、生温い数字が予想されている。個人所得は+0.3%が予測され、年間ベースだと+4%に相当し、2001年6月以来の高レベルになる。個人所得の上昇が続く限り、金利引き下げは無い、というアナリストも多い。

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